基本的には、人は褒められて成長するもので、叱るよりも褒めるべき場面が圧倒的に多いです。しかし、場面によって褒め方や叱り方には、必要とされる技術もあり、教育従事者にとっても難しいテーマです。
学校現場や児童発達支援の現場で、若手指導員の育成にも携わってきた経験から、この記事では特に大切なポイントを、実際の相談事例を交えながら、できる限り分かりやすい形でまとめました。
「成功体験」とは、合否のことではない
ある保護者の方から、お子さんの英検の初挑戦について「まずは合格できる級から受けさせたいんです。成功体験をさせたいので。」という相談を受けたことがあります。 結論から言えば、この保護者の考えにはひとつ大きな間違いがありました。
お気持ちはよく分かりますし、成功体験を積ませるのはとても大切なことです。
しかし、結論から言うと、「合格したかどうか」は、「成功体験かどうか」とは関係がありません。
大切なのは、お子さん自身が、何かに挑戦したことやその過程です。合格しても不合格でも、挑戦した経験は確実にお子さんの中に残ります。むしろ、不合格でも、それを乗り越えて「また挑戦しよう」と思える経験ができたなら、それこそが大きな成長です。「合格すれば成功、不合格なら失敗」という見方、つまり「合格を褒めること」は、時には子どもから挑戦意欲を奪ってしまう原因にもなってしまいます。
100点を褒めてはいけない?
結論としては、褒めてはいけないとまでは言いませんが「褒める必要はない」です。
お子さんが何かに挑戦したとき、つい結果に注目してしまいがちです。
- 「100点取れて偉いね」
- 「合格して偉いね」
- 「1位おめでとう」
もちろん嬉しい気持ちで言う言葉ですし、結果を褒めてはいけないとまでは言いません。ただ、結果ばかりを褒め続けるのは、実は挑戦意欲を下げたり、ズルをするようになるリスクがあります。挑戦意欲を下げるのは、結果を恐れて挑戦を渋るようになるからで、ズルをするようになるのは、過程ではなく結果を判断基準にしてしまうからです。
結果ばかりを褒められて育つと、子どもは「結果がよかったかどうか」を、自分の価値の判断基準にしていきます。よく意識されるのは、合否や点数などです。
「結果が良い時には、より褒められ」
「悪い時にはあまり褒められない(または叱られる)」
という経験が続くと、無意識のうちに結果を基準にするようになり、「結果が出ないかもしれない挑戦」を避けるようになっていくのです。
では、どんな関わり方をすれば、お子さんの挑戦意欲は育つのでしょうか。
ポイントは大きく2つです。
ポイント①:結果は「褒める」ではなく「共感する」
まず1つめのポイントは、結果に対する向き合い方です。結果は、必ずしも褒める必要はないものです。
- 合格したとき:「よかったね、嬉しいね!」と一緒に喜ぶ
- 不合格だったとき:「残念だったね。悔しいね」と一緒に残念がる
これだけで十分なのです。結果は、お子さん自身がいちばん感じていることなので、保護者は寄り添って共感するだけでいいのです。「褒めなきゃ」と力を入れる必要はありません。無関心はダメですよ。ちゃんと一緒に喜んだり、残念がったりしてあげましょう。
ポイント②:褒めるべきは「過程」や「行動」
2つめのポイントは、何を褒めるかです。
結果ではなく、「過程」や「行動」を褒めるのが、お子さんの意欲を育てる褒め方です。
- 「100点取れて偉いね」ではなく、「頑張ったね」
- 「合格して偉いね」ではなく、「勉強頑張ってたもんね。偉かったね」
過程や行動を褒める言葉は、結果に左右されません。0点だったとしても、取り組み方を褒めることはできるのです。むしろ努力のし始めで、結果に繋がらない時ほど、しっかり褒めてあげないといけません。
- 「分からない問題でも諦めないで頑張ってるね。粘り強く取り組んでるね!」
- 「間違えたところを、もう一度やり直したね」
- 「今日も机に向かったね」
こうした言葉は、結果がどうあれ、お子さんの行動そのものを認める言葉です。結果ではなく過程や行動、努力する姿勢を「ちゃんと見ているよ」ということが伝わると、お子さんが安心して挑戦できる「意欲の土台」になります。
逆に、結果に対して叱るということは、最もやってはいけないことです。結果に対しての評価ではなく、行動や過程のどこに、優れた点や問題点があったかを伝えなければならないのです。
ここで一つ考えてみてほしいことがあります。
もし、あなたのお子さんが、嫌そうに渋々、姿勢悪くダラダラと机に向かったら、なんと声をかけますか?
――答えは一つではありませんが、私なら、例えばこのように声をかけます。
「勉強って大変だよね。分かるようになるまでが、一番大変なんだよ。(ここまでが共感の部分)
それでも投げ出さないで、机に向かって偉いよ。(ここが行動を褒めている部分)」
この後にプラスで励ましを入れたりしますが、これで十分です。
この場面で「姿勢が悪い!」「シャキッとしなさい」「やる気出しなさい!」なんて声をかけるのは、ほとんどの場合で逆効果です。机に向かうこと自体が、余計に嫌いになってしまいます。
英検エピソードに戻って――こう声をかけたい
初めての英検で、仮にお子さんが不合格だったとき、
「初めてだったけど、よく頑張ったね。また挑戦すればいいんだよ。」
こう声をかけてもらった子は、不合格を「失敗」と捉えず、挑戦した経験として受け取れます。
それで2回目の受験を受け入れたなら、それ自体が大きな成長です。2回目の結果が出たときも、合否に関わらず、
「失敗しても、諦めずに挑戦できるのは凄いことだね!」
と、挑戦や行動そのものを認めてあげればよいのです。
仮に合格したときも、評価すべきは結果ではありません。
「合格して偉いね」ではなく、「勉強頑張ってたもんね。諦めずに挑戦できることが偉いよ。」と言うべきです。
合格に至るまでの努力を、ちゃんと言葉にして伝えてあげましょう。
「合格できそうな級から受けさせる」こと自体は良いと思います。ですが、必ずしも合格させる必要はなく、不合格でも子どもは成長できます。
合格であろうと、不合格であろうと、それが「成功体験」になるかどうかは、かけてあげた言葉ひとつで決まるということです。
まとめ
お子さんの学習意欲を引き出す褒め方のポイントは、次の2つです。
- 結果は褒めずに、気持ちを共感する
- 過程や行動、取り組みを褒める
褒め方・叱り方は奥が深いテーマですが、この2つを意識するだけで、お子さんの挑戦への向き合い方は確実に変わっていきます。お子さんがそこに至るまでに頑張ってきたこと、挑戦したこと自体を、言葉にして伝えてあげてください。

