【小5算数】つまずきやすい理由|元教員が解説 – なぜ5年生で差が開く? –

「5年生になってから、急に算数が苦手になってきた」「これまで普通にできていたのに、最近テストの点が下がっている」――そんなお子さんの様子に、心当たりはありませんか。

小学5年生は、算数で「できる子」と「苦手な子」の差が一気に開きやすい学年です。これは、その子の能力や努力の問題というより、カリキュラムの構造そのものに理由があります。この記事では、5年生算数で差が開きやすい構造的な背景を整理してお伝えします。お子さんの状況を理解するヒントになれば幸いです。

5年生の算数で扱う内容は、一気に複雑になる

まず、5年生の算数で扱う主な単元を見てみましょう。

  • 小数のかけ算
  • 小数のわり算
  • 分数(通分・約分・たし算・ひき算)
  • 倍数と約数
  • 割合と百分率
  • 平均
  • 単位量あたりの大きさ(人口密度など)
  • 速さ(一部の教科書では6年生に分かれる場合もあります)
  • 図形(合同・図形の角・正多角形・面積・体積)

こうして並べてみると、わずか1年間で、ずいぶん広い範囲を扱うことが分かります。また、ひとつひとつの単元の中身が、4年生までと比べて格段に「抽象化・複雑化」します。

4年生までは、整数を中心とした計算と、面積や角度の基礎が中心でした。分度器を使った「角の大きさ」、図形の「垂直・平行」、グラフの読み取りなど、手や目を動かして新しいルールを覚える単元が多く配置されています。5年生に比べると視覚的・直感的に理解しやすい内容ですが、4年生でも小数や分数の基礎、特に図形などでつまずく子は珍しくありません。

それが5年生になると、小数・分数の本格的な処理に加えて、割合や速さといった抽象的な概念まで一気に登場します。例えば「0.7倍する」のような小数の倍は、整数の倍に比べ具体的なイメージを掴みづらくなる抽象化の一つです。「もとにする量と比べる量の関係」「距離・時間・速さの3つの関係」といった関係性の複雑化も、「理解の難しさ」と「ミスの増加」の2つのハードルを生みます。

ところが、授業時数は4年生と変わらない

視覚的・直感的な理解が難しくなり、内容が複雑化するにもかかわらず、算数の授業時数は4年生と5年生でまったく同じ、年間175コマです(現行の学習指導要領による標準時数)。つまり、5年生では、これまでと同じ時間の中で、はるかに複雑な内容を消化していくことになります。1単元あたりに割ける授業時間は、相対的に短くなるわけです。

  • 概念理解の難しい単元をじっくり扱う余裕がなく、駆け足で進む
  • つまずいた子に個別に丁寧な対応をする時間が取りにくい
  • 演習の時間も十分に確保できず、定着しないまま次の単元に進む

もちろん、苦手な箇所は子どもによりますので、つまずくタイミングも子どもによりますが、5年生になると「概念理解が曖昧なうちに、次の単元に進んでしまう」状態に陥りやすくなります。得意な子はどんどん先に進むことができる一方で、苦手な子は理解が曖昧なまま授業が進んでしまうことで、算数が得意な子と苦手な子の二極化がより進むタイミングとなります。

つまずきは連鎖する

単元同士が密接につながっているため、つまずきが起きるとそれが連鎖するという算数の教科特性も強くなっていきます。たとえば、

  • 小数のかけ算でつまずくと、小数のわり算でさらに苦戦する
  • 分数の通分・約分ができないと、分数のたし算・ひき算で計算が進まない
  • 割合の理解が浅いと、百分率や単位量あたりの問題で式が立てられない

もちろん4年生までの基礎的な理解度も関係します。そして一度つまずきが起きるとそれを引きずりやすい構造があり、その影響は先の学年にも及びます。中学以降の数学も小学校の算数が土台となります。

5年生で「差が開く」のは、構造的に必然

ここまで見てきた3つの構造を整理すると、5年生で算数の差が一気に開く理由が見えてきます。

  • 扱う内容が、4年生までより一気に複雑になる
  • にもかかわらず、授業時数は変わらない
  • 単元同士の繋がりが密接で、つまずきが連鎖する

この3つが組み合わさると、いったんつまずいた子は、追いつくのが急に難しくなります。一方で、土台がしっかりしている子は、5年生の新しい内容にもスムーズに対応していきます。両者の差は、5年生の1年間で急速に開いていくのです。よく「5年生は算数の分岐点」と言われますが、これは精神論ではなく、こうしたカリキュラムの構造から、ごく自然に生じる現象だと言えます。

家庭学習の役割が、5年生からは特に大きくなる

このような構造を踏まえると、学校の授業だけでは消化しきれない部分を補うため、5年生からは家庭での学習の役割が、これまで以上に大きくなると言えます。学校の授業スピードが速いと感じているようなら要注意です。必要に応じて学習塾を活用するのも良いでしょう。当サイトでは無料の算数プリントも提供していますので、家庭での演習にもご活用いただければと思います。

タイトルとURLをコピーしました