「小数のかけ算」は、小学5年生の算数の中でも、つまずきが起きやすい単元のひとつです。
ここでのつまずきは、先の単元への影響もひときわ大きいです。中学まで引きずることもあります。
つまずきの原因は子どもによりますので、実際には必要な対応も一様ではありませんが、この記事では現場でよく見かける小数のかけ算のつまずき「3つのパターン」と、教え方のポイントをお伝えします。
ご家庭でお子さんに教えている保護者の方、個別塾・家庭教師として指導されている方の参考になれば幸いです。
理由①:そもそも基礎が固まっていない
小数のかけ算は新しい単元ですが、計算の中身は「整数のかけ算 + 小数点処理」です。既習単元の土台の上に、「小数点の処理」という新しい要素が乗っています。
「掛け算九九」や「整数の筆算」などは既にできる前提で学習が進んでいきます。そのため、
- 掛け算九九があいまい
- 整数の筆算でくり上がりや位ずれを起こす
等のように、「小数点の処理」とは違う部分で手が止まってしまう子にとっては、「九九」「筆算」「小数点」・・・など、未修得の要素を同時に学習していかなければなりません。そのような子は既に算数に苦手意識をもっていることも多く、余計に頭がパンクしてしまいます。
教え方のポイント
- 復習ページが多めの教材を選ぶ
- 小数点を取り除いて、再提示してあげる
・・・など、個別に支援をしてあげる必要があります。まず土台を整える方が結果的には近道でしょう。
とはいえ、学校の授業はどんどん進んでいき、待ってはくれません。子どもにとっても低学年の学習に戻るのは抵抗がありますし、だんだんと素直に言うことを聞かなくなる年齢でもあります。
既習範囲でつまずく子は、付きっきりで粘り強い支援が必要なことも多いです。場合によっては、演習型の学習塾などを検討してみるのも良いでしょう。
理由②:桁・小数点の位置を間違えやすい
小数のかけ算で一番つまずきやすいのが、ここです。新しい要素の部分ですから当然ですね。
「2.5 × 0.4」のような問題では、
- 小数点をいったん外す(25 × 4)
- 整数として計算(= 100)
- 動かした分だけ小数点を戻す(小数点を2つ左へ)
という、3ステップの作業が必要になります。それまでの整数のかけ算は「計算するだけ」だったので、急に手順そのものが3つも増えることになります。
紙の上では、小数点にスラッシュを入れるなどの書き込みが増え、見た目も煩雑になります。特にノートが雑な子は、ここでのミスがけっこう増えます。
教え方のポイント
- ノートを丁寧に書かせる。特に、桁がずれないようにマス目に合わせて書くように。
- 小数点を動かした桁数を数えさせる
小数点の移動なども含めて、まずはノートの書き方指導を見直してみて下さい。「時間がかかってもいいから、大きく丁寧に書いてごらん」と指導するだけで、ミスがぐっと減るケースが実際にあります。罫線だけのノートを使っている場合は、マス目のあるノートに変えた方が良いかも知れません。
また、末尾の0処理(例:2.5 × 0.4 = 1.00 → 1)も最初は迷いやすいので、「途中では0を書いておいて、小数点を戻してから、最後に消す」というルールを、何度か見本も見せながら指導します。ミスが多い子には、「省略せずに書く」ように伝えると良いケースが多いでしょう。
この単元は、ワーキングメモリ(短期記憶を保持しながら処理する力)への負荷も大きいです。良かったら、コチラの記事も参照して下さい。
理由③:具体的な量のイメージが持てない
3つめは、見落とされやすいところですが、実はミスを自分で修正できるかどうかを左右する重要なポイントです。
算数の学習は、学年が進むにつれて、だんだんと抽象化が進んでいきます。やがて数学になると、より抽象的な概念を扱うことになります。
この単元では、整数が小数に置き換わっただけなのですが、「1mの値段が50円のリボンが2m」といった整数の処理から、「1mの値段が50円のリボンが2.2m」のように小数に変わるだけで具体的な量の感覚が掴みづらくなることがあります。2より大きく、3より小さいといった量の感覚やイメージを持てるかどうかで、学習の負担がずいぶん違ってきます。
「8 × 0.7」のような問題で、答えを「56」と書いてしまうことはよくありますが、概念理解が深まっている子は、特に文章題で、答えの桁が違うなどのミスに「あれ、おかしいな・・」と自分で気付けることが増えます。逆にこのイメージが弱いと、計算ミスに違和感を持たないまま提出してしまいます。
教え方の工夫
- 図やイラストが多めの教材を選択して、視覚的にも理解を深めさせる。
- 「0.5をかける=半分にすること」「0.1をかける=10分の1にすること」と言葉で言い換える。
- 計算したあとに、「だいたい合ってそう?」と一言聞いて、考えさせる。
桁が違うことに違和感を持っていない子には、文章題じゃなくても、図やイラストを用いながら、「・・・だから、これだと大きすぎるよね。」などと説明してあげるのも良いでしょう。
理解より先に「やり方」を覚えてしまっていい場面もある
この段階では、まずはある程度意味や概念の理解を促していくべきだと思いますが、すぐにはピンと来ない子も多いです。
意味を完璧に理解するのを待っていると、いつまでも先に進めない子もいます。子どもによっては、無理に完璧を目指しすぎず、やり方のパターンをひたすら機械的に演習させていく方が早いこともあります。
どのタイプの子にも、演習量は必ず必要
そして、「どのタイプの子であっても、一定量の演習は必ず必要」です。
「量をこなす演習」は、「理解を深める学習」とは目的が違います。「スピード」「正確さ」「定着率」などを高めていくことが演習の目的です。理解できたところがゴールではありません。
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