【算数が苦手?】その原因「ワーキングメモリ」かもしれません|つまずきのサインと3つの支援のコツ

「何度教えても計算ミスが減らない」「やり方はわかっているはずなのに、途中で手が止まる」――そんなお子さんの様子に、心当たりはありませんか。もしかするとその背景には、「ワーキングメモリ」の弱さが関係しているかもしれません。

ワーキングメモリとは、ひとことで言うと「必要な情報を一時的に覚えておきながら、同時に作業を進める力」のことです。たとえば、口頭で「牛乳と卵とパンを買ってきて」と言われて、それを覚えながらお店まで歩いていく。これも立派なワーキングメモリの働きです。

算数は、実は「覚えながら考える」場面の連続です。この力に苦手さがあると、「本人は一生懸命なのに、なぜかうまくいかない」ということが起こりやすくなります。この記事では、現場でよく見かける「ワーキングメモリが弱い子の算数のつまずき」のサインと、支援のコツ3つをお伝えします。

算数は「覚えながら考える」教科

算数は、他の教科に比べても、ワーキングメモリへの負荷が大きい教科です。たとえば、こんな場面を思い浮かべてみて下さい。

  • 繰り上がりのある足し算で、「1くり上がる」を覚えておきながら次の位を計算する
  • 筆算で、途中の計算結果を覚えておきながら、次の段を書く
  • 小数のかけ算で、「小数点を何個動かしたか」を覚えておきながら計算を進める

どれも、「一時的に何かを覚えておく」ことと「別の作業をする」ことを、同時にこなしています。繰り上がりや繰り下がり、小数点の移動、単位の換算など、学年が上がるほどに処理する情報は増えていき、ワーキングメモリへの負荷も上がっていきます。高学年ぐらいから、算数が得意な子と苦手な子の差が顕著になりやすい理由の一つでもあります。

ワーキングメモリが弱い子に見られるサイン

ワーキングメモリに苦手さがある子には、算数の場面でこんな様子が見られることがあります。

  • 計算の途中で手が止まり、「何やってたんだっけ?」となる
  • 繰り上がり・繰り下がりの数を、計算し忘れる
  • 筆算などで桁がずれてしまう
  • 文章題で、極端に時間がかかる
  • 単位の付け忘れや、付け間違いが多い

算数に限らず「口頭での指示が、一度に複数あると混乱する」「意味は理解しているのに、ケアレスミスが多い」ような子は、要注意です。ここを「不注意」「集中力がない」と片づけてしまうと、子どもは自信を失っていきます。「もしかしたら、少しの工夫で改善できるかもしれない」という視点を持つことが、最初の一歩になります。

支援のコツ①:途中式を省略せずに書く

ワーキングメモリが弱い子への支援の基本は、「頭の中で覚えておく量を、できるだけ減らしてあげる」ことです。一番効果的なのは、覚えておくべきことを「紙に書き出してしまう」ことです。

  • 繰り上がりの数は、小さくても必ず書かせる
  • 途中式を省略させず、最後まで書かせる
  • 計算の途中経過も消さずに残させる

これだけで、ミスがぐっと減る子は実際にたくさんいます。素直に言われたことを実行する子は、驚くほど簡単に改善されることもあります。面倒臭がりな性格と合わさると、指導場面において根気がいることも多いですが、「多少時間がかかってもいいから、ミスが減る方が大事だよ。」と伝えてあげましょう。

余談ですが、基本的に、省略した時に叱るよりも、ちゃんと書いた時に褒める方が効果は高いです。

支援のコツ②:ノートを丁寧に書く

見逃されがちなところかもしれませんが、ワーキングメモリに苦手さが見られる子にとって、ノートを丁寧に書くことは、実はとても重要なことです。具体的には、以下のようなことを注意してみて下さい。

  • 字を丁寧に書く
  • 計算ごとに1行空けるなど、整理して書く
  • マス目のあるノートを使って、桁をそろえやすくする

「自分で書いた繰り上がりの数字を読み間違えて計算してしまう」ようなことは、実は珍しくありません。このような行動の改善を促すのは簡単なことではありませんが、少なくとも自分で読み間違えない程度には、丁寧に書くようにさせたいところです。行や桁をきちんと揃えて書かせるのも、同様の理由です。

雑なノートでも計算ミスが少ない子もいます。ノート指導は必ずしも全ての子に必要とは言えませんが、ワーキングメモリの苦手さと合わさると、ケアレスミスが顕著な子になってしまいます。理解できているのにミスが多いタイプの子は、ノート指導も重要なケースが多いです。

支援のコツ③:課題を細分化する

算数に限ったことではありませんが、余裕があれば以下のようなことにも注意してみてほしいです。

  • 一度に出す指示は、できるだけ一つずつにする
  • 口頭の指示だけでなく、板書などの視覚情報を残す
  • 問題を一気に解かせず、少しずつ区切って取り組ませる
  • 同じパターンを、何度も繰り返して練習させる(演習量)

「まずここに補助線を引いてAとBに分けて、それぞれの面積を求めて、合計しましょう。」という指示が長すぎて一度に処理しきれない場合は、細かく区切ってやらせてみるのが良いでしょう。例えば、次のようなイメージです。

先生:「ここに補助線引いて」

子ども:「引いた」

先生:「ここがAで、ここがBね(書く)」

子ども:「うん」

先生:「Aの面積を求めて」

子ども:「求めた」

先生:「Bの面積を求めて」

子ども:「求めた」

先生:「AとBの面積を足したら、全体の面積が出るね。」

子ども:「できた」

また、同種の問題を繰り返し解かせ、演習量をこなすのはとても重要です。その手順がだんだん定着してくると、「考えなくてもできる」ようになっていきます。手順が自動化されると、その分ワーキングメモリの負担が減り、ほかのことに脳のリソースを使えるようになります。つまり、ワーキングメモリの弱さは、「練習で手順を自動化する」ことで、ある程度カバーできるのです。

必要な演習量は子どもによりますが、基本的に全ての子に必要と言って過言ではありませんので、よく学校の宿題になる「計算ドリル」はとても重要だということです。当サイトでも無料の学習プリントを提供していますので、よかったら活用して下さいね。

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