【ワーキングメモリとは?】子どもの学習・生活との関係をわかりやすく解説

ワーキングメモリとは、ひとことで言えば「必要な情報を一時的に覚えておきながら、同時に作業を進める力」のことです。

勉強の場面だけでなく、買い物や料理、会話など、日常のあらゆる場面で働いています。最近では一般の方でも耳にする機会が増えており、実際の支援の現場では、保護者からご質問をいただくこともありました。

この記事では、ワーキングメモリとは何かをわかりやすく整理したうえで、子どもの学習や生活との関わり、そして関わり方のポイントをお伝えします。

ワーキングメモリとは?

ワーキングメモリは、ただ「覚えておく」だけでなく、「覚えながら、それを使って何かをする」ことを意味しています。

たとえば、電話番号を聞いて、それを頭の中で復唱するだけなら「覚えておく」だけで足ります。たった1秒でも一時的な記憶です。でも、その番号を逆から言ったり、一部だけ抜き出したりするとなると、「覚えながら、同時に操作する」ことが必要になります。これがワーキングメモリの働きです。

よく似た言葉に「短期記憶」がありますが、こちらは「情報を一時的に覚えておく」ことのみを指して使われることが多いです。ワーキングメモリは、それに加えて「覚えた情報を使って作業する」ところまで含む、より広い意味で使われます。

(※短期記憶とワーキングメモリの線引きは、専門家の間でも整理に幅があります。この記事では、保護者の方にもイメージしやすいよう「覚えながら作業する力」という意味でお話しします。)

身近な例で見るワーキングメモリ

ワーキングメモリは、特別な場面だけで使う力ではありません。むしろ、毎日の生活の中で、私たちは無意識にこの力を使っています。

  • 「牛乳と卵とパンを買ってきて」と言われ、それを覚えながらお店まで歩く
  • 相手の話を覚えておきながら、自分の返事を考える
  • フライパンで魚を焼きながら、まな板で野菜を切り、ご飯の炊き上がり時間も気にかける

野菜を切っている間に、魚のことを忘れてしまったら、焦がしてしまいますね。

どれも、「何かを一時的に覚えておく」ことと「別のことをする」ことを、同時にこなしています。こうして見ると、ワーキングメモリは「勉強のための特別な能力」ではなく、大人も子どもも関係なく、誰もが日常的に使っているとても身近な力だとわかります。

ワーキングメモリには個人差がある

このワーキングメモリには、生まれつきの個人差があります。走るのが速い子もいれば、遅い子もいるのと同じです。たくさんのことを同時に覚えておける子もいれば、少し苦手な子もいます。

ここで大切なのは、「ワーキングメモリが弱い=能力が低い」ではない、ということです。ワーキングメモリの強さは、いわば「一度にいくつのことを手元に置いておけるか」という作業スペースの広さのようなものです。スペースが少し狭いだけで、その子の理解力や集中力とは別の話です。

ワーキングメモリの苦手さは、しばしば発達特性(ADHDや学習面の特性など)との関連が指摘されます。ただし、これは医学的な診断とは別の話です。「ワーキングメモリが弱いから発達障害だ」と決めつけるようなものではなく、あくまで「そういう傾向が見られることがある」という程度に理解しておくのがよいでしょう。もし発達の検査などで、お子さんのワーキングメモリについて知る機会があっても、それはお子さんの才能に一喜一憂するためではありません。その子は「何が得意で、どんな機会を与えてあげれば才能を活かせるのか」「何が苦手で、どんな支援をしてあげれば生活が楽になるのか」といった、個別の関わり方を考えるきっかけにすぎないのです。

ワーキングメモリが弱いと、どんな場面で困りやすい?

ワーキングメモリに苦手さがあると、学習面でも生活面でも、いくつかの「困りやすい場面」が出てきます。

例えば、学習面では…

  • 計算の途中で、何をしていたか忘れてしまう
  • 黒板を写すのに時間がかかる
  • 音読で、行を見失ってしまう
  • 「教科書の◯ページを開いて、△番までやったら並んでください」のような複数の指示を、覚えきれない

生活面では…

  • 忘れ物が多い
  • 一度にいくつも頼まれると、混乱してしまう
  • 片づけの途中で、別のことを始めてしまう

これらは、本人の「やる気のなさ」や「だらしなさ」のように見えてしまいがちです。けれども、その背景にワーキングメモリの苦手さがあるとしたら、叱っても解決しません。特に算数は、ワーキングメモリへの負荷が大きい教科です。興味がありましたら、こちらの記事も参考にどうぞ。

(※ 同じ現象でも原因が違うこともあります。もし家庭で解決困難な悩みがあるなら、専門家に相談した方が良いでしょう。)

子どもへの関わりで大切にしたいこと

ワーキングメモリの苦手さがある子に関わるとき、私が大切にしていることを、いくつか挙げてみます。

  • 「直す」より「補う・環境を整える」:ワーキングメモリそのものを無理に鍛えようとするより、「覚えておかなくても済む工夫」をしてあげる方が、子どもはずっと楽になります。メモを使う、手順を見える形にする、といった工夫です。
  • 結果を叱るより、挑戦を認める:苦手さからくるミスを叱り続けると、子どもは自信を失っていきます。「できなかったこと」を責めるより、「頑張っていること自体」を認めるほうが、結果的に伸びていきます。失敗が多い子ほど、挑戦意欲そのものを褒めてあげましょう。結果が出てなくても、「頑張ってるね」と褒めることはできるものです。
  • 一度にたくさんを求めない:指示は一つずつ、課題は小さく区切って、一度に扱う情報量を減らします。少しずつ「できた」を積み重ねていくことが、遠回りのようで近道となることが多いです。まずは「その子への理解を深め、その子に合わせて関わる」という視点を持つことが、何よりの出発点になります。
  • 慣れることで、負担は軽くなる:「うちの旦那は料理ができない」といった話はよくあることだと思いますが、毎日料理をする奥さんと月に一回しか担当しない旦那さんでは差があるのは自然なことです。考えなくてもできるぐらい慣れてくると、ワーキングメモリへの負荷は軽減されますが、一つひとつの手順を一生懸命考えながらやっているうちはとても負担が大きいものです。算数の計算問題などでも、慣れるまで演習を繰り返すのはとても大事なことで、慣れるまではミスが多いのも自然なことです。周囲が寛容になって根気よく付き合ってあげるのも大切ですね。

実際は、状況によって対応が大きく変わりますが、少しでも参考になることがあれば幸いです。

まとめ

ワーキングメモリは、誰もが日常的に使っている「覚えながら作業する力」です。そこには個人差があり、苦手な子もいて当然、というだけのことです。

大切なのは、その苦手さを「能力の問題」や「やる気の問題」と決めつけないこと。特性を理解し、その子に合った関わり方を工夫することで、子どもの「困った」は確実に減らしていけます。

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